PROJECT STORY

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耐震化ユニット落下させない、ずれない、
曲がらない

東日本大震災後、東北にある小中学校の体育館の多くが避難所となった。
天井から吊り下げられたバスケットゴールが落ちてくるのではないか、
という声から耐震化ユニットは生まれた。
それぞれの立場から耐震化ユニットの商品化にかけたセノーの思いの物語。

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コンセプトは「落下させない、ずれない、曲がらない」

東日本大震災後、被災地にある多くの小中学校の体育館は避難所となった。施設点検を行っていた社員から聞かされたのは「吊り下げ式のバスケットゴールが落ちてきそうで怖い」という避難者の声だった。

「セノーの開発部門として貢献できることはないだろうか?」

小中学校の体育館は必ず避難所となる。設置されているバスケットゴールが避難されている方の不安材料になってはいけない。それぞれが真剣に考え、議論し、意見をぶつけ合った。すでに設置されている器具を補強させる形で、大きな地震に耐えられるユニットを作ろうという明確な指針が決まった。開発コンセプトは「落下させない、ずれない、曲がらない」。

コンセプトは「落下させない、ずれない、曲がらない」

こだわりと仕様とメンテナンス性とのせめぎ合い

設計を任された中島は悩んでいた。そもそも耐震化とはどのようなものなのか、という地点からのスタートだった。地震が起きた時に器具にかかった力(地震力)を分散させる必要があることはわかった。それを実現する構造がどんなものであるかは中島にも見当がつかず、様々な文献や資料に目を通し、使えそうなものについては何百回と構造計算を繰り返した。

ユニットの形状や材質まで考えぬいて納得のいくものを仕上げたい気持ちは強い。しかし現実的な商品として開発するためには適正な価格で量産でき、かつメンテナンス性も考慮しなければならない。そのバランスを最適化させるために譲れない順番を考えぬいた。

たどり着いた答えは、地震力をバスケットゴール本体から逃がすこと。それを実現する補強金具の設計をする中島は使命感に燃えていた。

こだわりと仕様とメンテナンス性とのせめぎ合い

セノーだからできた耐震化ユニット

現在、セノーはバスケットゴールの耐震化を重点施策として扱っている。他社も同じような開発を始めている。構造計算を繰り返し、耐震化ユニットを生み出した中島だから言えることがある。耐震化は決して簡単にできるものではないと。ただ、落下させないだけならワイヤーを巻きつければいい。開発コンセプトである「落下させない、ずれない、曲がらない」を実現できているのはセノーだけだ。耐震化ユニットの開発を通じて、耐震については行政の担当者や設計事務所の方々と対等に渡り合える知識を身につけ、自信をつけることができた。今、当たり前にあるものにも開発の始まりはある。その一翼を担うことができた中島は、今日も新たな製品開発に挑戦している。

セノーだからできた耐震化ユニット

本当に安心してもらえるために必要なものは何なのか

東日本大震災後、中山は小中学校の体育館器具の点検に周っていた。被災地域の小中学校の吊り下げ式のバスケットゴールが外れていたり、落下の危険がないかを点検するためだ。

仙台で中山が目にしたのは、避難所となった体育館だった。たくさんの方が布団を敷いてうずくまっている光景に震災の恐ろしさをあらためて実感した。普段より気を遣いながらバスケットゴールのメンテナンスを終えた中山に、避難者の一人が言った。「夜、天井を見上げるとバスケットゴールが揺れていて怖いんだよね」中山は戦慄を覚えた。もしこれが落下したら、とんでもない事故になる。

自分たちがやっているメンテナンスだけでは避難者の方の不安を取り除くことはできない。しかし、セノーという会社であれば、自分たちの仲間ならこの問題を解決できることができるはずだ。中山は社内プロジェクトの必要性を説いた。吊り下げ式バスケットゴールの耐震化ユニットの開発は、こうした現場の声から始まった。

開発側のコンセプト、メンテナンス側の意見

試作品を見たとき、素直に驚いた。「これはすごい・・・、これなら落ちない!」と強い自信を感じた。コンセプトを実現させたセノーの開発スタッフの底力に感服した。

しかし、メンテナンス部門として気になる部分はあった。試作品ではパーツが多く、全体的に重量があったのだ。吊り下げ式のバスケットゴールはパーツが増えることで天井への負荷が大きくなってしまう。開発側の真剣な気持ちは十分に理解できた。だからこそ、長く使っていただくために、より安全に安心して使っていただくために、メンテナンス性も大切な要素であることを真摯に伝え続けた。現場にいる人間だからこそ言えることがあるのだ。

メンテナンスという仕事の醍醐味

放課後の中学校にバスケットゴールを修理しに行くと、生徒達が一列に並んで「ありがとうございます!」と言ってくれる。この子たちがどれほど自分が来るのを待っていてくれたのかと思うと、必要とされていることを実感する。スポーツ器具は裏方の存在かもしれない。しかし、器具が正しく設置されていなければ試合も練習もできない。メンテナンスという仕事を通じて、スポーツの現場と携わり続けることができる自分の仕事に中山は誇りを持っている。

人と人とのつながりが実を結ぶセノーの仕事

学生時代からスポーツに関わる仕事がしたいと考えていた。国際大会にも採用されているスポーツ器具を多く製造しているセノーに就職し、施設や設備にも関わるようになった。納品先の要望に応えること、製造現場のスケジュールを調整すること、工事現場で柔軟に対応していくこと、営業という仕事は結局のところ、人と人との熱意のぶつかり合いが全てなのだ。

東日本大震災以降、自分が担当している四国エリアでも耐震化や災害対策は積極的に問い合わせがあった。普段から接している体育館が避難所になることは理解していた。東北にメンテナンスに行った社員から「吊り下げ式のバスケットゴールが揺れて怖い」、という話を聞いた時、自分たちがなんとかしなければ、と思った。スポーツ器具メーカーであるセノーは何ができるだろう。思い悩み始めていたとき、重点施策となった耐震化ユニットの存在を知った。

製品に自信を持てること

重点施策である耐震化ユニットの営業することになった際、一つの狙いがあった。東日本大震災を教訓に、四国の行政では南海トラフ地震対策が積極的に考えられていたのだ。セノーだからこそできる地震対策。学校体育館や公共施設を中心に、耐震化ユニットの有効性を伝えていく営業スタイルを続けた。そして、高知県のある中学校で採用が決まった。

設置納品に立ち会い、現場で取り付けられたものを確認した。試験室ではない、実際の現場で取り付けられた耐震化ユニット。吊り下げ式バスケットゴールを揺らしてみた。今までより全く揺れていない。自分でも強すぎるくらいの力をかけて揺らしてみた。これまでとは違い、揺れが格段に制御されていることがすぐにわかった。全く揺れないわけではないが、このくらいなら天井を見上げて恐怖を感じることはない。お客様にも耐震化ユニットの実力を実感いただくことができた。

自分は設計にも開発にも関わってはいない。だからこそ客観的にこの製品のすごさを実感することができた。高橋はセノーの営業として自信を持って言える。「スポーツ器具に関わることならセノーに任せてください」

こだわりと仕様とメンテナンス性とのせめぎ合い