Special Interview

モトタイル

モトタイル開発者
ヘンリックハウトップルンド氏
モトタイル

2017年4月28日、デンマーク大使館にてモトタイルのプレス発表が行われた。プレス発表会にあわせて来日したモトタイルの開発者であるルンド教授に、開発にまつわる様々なエピソードや今後の展望についてお話いただいた。

いよいよ、モトタイルが日本で販売を開始しますが、プレス発表を終え、今のお気持ちを聞かせてください。

とてもワクワクしています。セノー、ミズノそして日立ハイテクノロジーズ(もしくはセノーと日立ハイテクノロジーズ)とのコラボレーションによる可能性は、日本という市場への期待を大きく膨らませてくれます。日本は高齢者の人口増加に伴い、運動機能の低下や認知症にまつわる介護問題など、社会的な問題を抱えています。かつてデンマークも高齢化社会やそれに伴う医療費の増加といった社会的な問題を経験しました。政府の高齢者福祉政策の転換や民間団体のシステムの変化により、今では問題を解決し、ハイレベルな福祉国家と言われています。デンマークのような福祉システムを取り入れることで、日本の高齢者に関する社会的な問題を解決するヒントになるのではないかと思っています。このような背景から、モトタイルはテクノロジーやデザインに於いて、日本にマッチしていると思います。

4月24日にモトタイルがブレインサイエンスマークを取得しましたが、その点についてはいかがですか?

日立および日立テクノロジーズが認定・発行するブレインサイエンスマークを取得できたことは、大変喜ばしく思っています。ブレインサイエンスマークは脳科学的に効果が期待できると証明された製品に付与されるマークです。デンマークでは身体機能の改善・向上に着目して開発してきましたが、今回のブレインサイエンスマークの取得で、日本では認知機能の向上にも効果があることが証明されたわけです。「動く」ことと「考える」ことのデュアルタスク(二つ同時の課題解決)により、多くの人たちが抱える様々な問題を克服できれば、こんなに嬉しいことはありません。それが、私の夢でもあるわけですから。

なぜ、モトタイルをつくろうと思ったのですか? そのきっかけを教えてください。

このアイデアは、長年 一緒に仕事をしていたレゴとのコラボレーションから生まれました。体を動かして使用できる賢いレゴブロックをつくりたいと、ずっと考えていたのです。ある時、レゴブロックにテクノロジーを入れたら、何かできるのではないか? とひらめきました。

そこで、気軽に遊び感覚で楽しめて、身体機能の向上や改善、維持、回復に役立つものをつくりたいと試行錯誤を重ねた結果、たどり着いたのがモトタイルだったのです。

研究・開発を進める上でもっとも苦労したところはどこですか?

とにかく、いろいろと長い時間がかかりました。開発の過程で、作ろうとしているものは本当に正しいものなのか? ターゲットとしている人たちに合っているのか? この自問自答を繰り返しました。その答えを見つけるために、様々なゲームをつくり、どうすれば身体を動かしてもらえるかを考えました。特に、高齢者の方々はあまり積極的にテストに参加していただけないので、どうすれば参加しやすくなるか・楽しく身体を動かしてもらえるかという課題を解決するのは、とても難しいものでした。完成するまで10年以上かかりました。

そんな苦労の末にモトタイルが完成したわけですが、その時の気持ちを聞かせてください。

完成したモトタイルをデンマークで最初に手にした時は、それはもうすごく嬉しくて、まるでわが子を抱きしめるような気持ちで、抱きかかえました。そして、モトタイルの販売を開始し、様々な施設で楽しそうにエクササイズを行っている人たちを目にしました。特に、歩行に杖を必要としている高齢者の方々が、モトタイルのエクササイズをした後に杖なしで歩行する姿を見たときには、この上ない喜びを覚えました。そして、実際に高齢者の生活の質が上がり、また生活が変わる姿を、次々と見ることができたのです。

モトタイルについてデンマークのセラピストは、「バランス感覚を鍛える上ではとても良い製品である」と推薦してくれました。10年以上試行錯誤を繰り返し、たくさんの試作品をつくってきた中で、高齢者の生活向上に良い効果を出すことができたことは、私にとってとてもエキサイティングなことでした。

日本ではブレインサイエンスマークを取得したこともあり、高齢者における認知機能の向上に注力して展開する予定と伺っています。

身体活動とその後の認知機能との間には重要な関係があるということが科学的に証明されています。日立及び日立テクノロジーズの脳科学を使ったテストでも、認知機能の維持・向上に効果があることが認められました。これらのことからも、高齢者の認知機能の向上に注力して展開することは、とても良いことだと思っています。日本に限らず、これまで展開してきた国々や今後展開していく国々でも、大きな注目点であると考えています。

今後の具体的な展望を教えてください。

セノー、(ミズノ、)日立テクノロジーズとともに、日本市場向けにモトタイルの開発と改良に時間をかけてきました。身体と脳トレーニングの組み合わせはとても興味深く、他の国々の高齢者にも応用し、届けることができると確信しています。また、モトタイルはレゴブロックにとてもよく似ていて、異なる文化や言語、年齢といった障壁を越えて使用できるように考えられています。これまで、ヨーロッパをはじめ、アジア、アラビア諸国、そしてアフリカで、モトタイルによって人々が楽しく幸せになっている姿を見てきました。日本での経験を通して、新しい身体トレーニングと脳トレーニングのツールとして、モトタイルが世界中に広がることを期待しています。

最後に、これから利用者となる日本の皆さまへメッセージをお願いします。

日本には、高齢者人口の増加、運動機能や認知機能の低下がもたらす介護問題や、高齢者の医療費の増加といった課題において、かつてのデンマークとよく似た課題があります。そこでデンマークからモトタイルのような例を日本に取り入れることによって、日本の社会的な課題の解決に貢献でき、さらには社会全体の幸福度を上げることができるのではないかと、強く思っています。

また、1分以内に設置でき、最小限のスペースで保管でき、片手で持ち出せる“Small is Smart”というデザインコンセプトは、シニア活動センター、リハビリセンター、フィットネスセンター、スポーツクラブ、会社や個人宅でも、きっと活躍してくれることでしょう。

モトタイルによって、日本の皆さまの幸せな暮らしに貢献できることを、心より願っております。

ルンド教授プロフィール

Henrik Hautop Lund(ヘンリック ハウトップ ルンド)氏
エンターテインメント・ロボティックス社のディレクターであり、世界でも著名なロボット工学研究者。
デンマーク工科大学プレイウェア・センター創設者でありセンター長。日本でもなじみのある知育玩具レゴのレゴラボを創立。1997年から2000年まで所長をつとめる。現在までに200をこえるロボットに関する科学記事を出版。
デンマーク研究評議会のメンバーであり、東京・赤坂迎賓館において天皇陛下の前でロボットに関する研究発表を行っている。
ロボクラスター産業振興組織の創設者。ロボカップヒューマノイドスタイル2002世界チャンピオン。