PROJECT STORYプロジェクトストーリー

段違い平行棒

シッティングバレー

障害スポーツでの取り組みを
よりセノーらしく

バレーボールの国際認定器具メーカーとして、その品質を評価されているセノーは安心・安全を求めシッティングバレーにおいても楽しむための器具の開発に乗り出す

インタビュー

満を持して

バレーボールや体操、バスケットボールの国際認定を有し、世界的な国際大会にも採用されているセノーの製品。2020年に向けてスポーツへの取り組みが盛り上がる今、営業統括推進部で陣頭指揮をとる水野は満を持してという強い思いがあった。それが障がい者スポーツの一つとして認知が高まりつつあるシッティングバレーの器具の開発だった。

これまでに多くのバレーボールの国際大会でセノーの器具は採用されてきた。世界に認められる品質を誇れるようになった今だからこそ、障がい者スポーツの器具にも取り組める力がある。この品質をもって、シッティングバレーの支柱を作る。それこそがセノーが挑戦すべき仕事なのだ。

満を持して

支柱を作るのではない。誰もが安心して楽しむことのできる環境を作るのだ。

シッティングバレーに限らず、障がい者スポーツの競技備品は、まだまだ整備されているとは言い切ることができない。一般競技と比較すると競技人口も少なく、製品としての需要が少ないこともあり、明確な基準がないこともあった。だからこそ、安全で一定基準を持った品質の高い製品を提供する必要があると水野は考えた。あらゆる人にスポーツを楽しんでほしいという思いと、これまでのバレーボール器具開発で培った実績を持って水野は日本パラバレーボール協会のドアを叩いた。

支柱を作るのではない。誰もが安心して楽しむことのできる環境を作るのだ。

本当の使いやすさとは何か

「まずネットを作ってもらえないか」という要望を日本パラバレーボール協会から頂き、ネットとアンテナの試作に取りかかった。もともとバレーボール器具では国内外の評価を得ていたこともあり、早い段階から満足いただける製品を開発することができた。実際の試合でも使っていただき、プレーヤーの方からの意見も参考にしながら改良を加え、ついに国際パラバレー連盟にもセノーの器具を使っていただけるチャンスが来た。

しかし、それだけでは足りない。
プレーを楽しむ方に安全・安心を届けるためにはいくつもの改善の余地があった。開発部門と協議を繰り返すなかで、協会の先生からも、下半身の動きに制限のあるプレーヤーがコートの準備や後片付けを行うため、「軽さ」にこだわりを求められた。セノーには2015年に発売した業界最軽量のカーボン製のバレーボール支柱がある。一般的なスチール製の支柱と比べ、重量はおよそ三分の一。求められる「軽さ」に満足いただける製品を提供することが可能となった。そして国内外問わずシッティングバレーの競技人口を増やしていこうという流れが生まれている。「業界最軽量」を誇るセノーの器具が広く活躍するチャンスも広がっている。

本当の使いやすさとは何か

国際認定取得、障がい者スポーツの発展に向けて

2016年8月、セノーが開発したシッティングバレーの支柱(およびネット)はついに国際認定を取得。「セノーが障がい者スポーツに貢献できることはまだまだたくさんある」シッティングバレーの経験はセノーがこれから歩むべき道筋の一つとなった。『スポーツと健康の未来を創る』その仕事をしっかりと続けるために水野の挑戦は続く。

国際認定取得、障がい者スポーツの発展に向けて

「セノーとしてやらなければならない仕事がある」

営業統括部からの要望には、従来の製品開発よりも強い意志のある言葉があった。バレーボール器具はセノーの主力製品である。開発に関わっている田中にはその設計に携わる誇りもあった。正直なところ、シッティングバレーについて詳しい知識は持っていなかった。バレーボール器具の開発に携わる身としては、障がい者スポーツへの取り組みは、積極的に取り組むべきだと考えていた。一から色々なことを協会の方やセノー営業に教わりながら、田中の開発はスタートした。どんな人でも安心して使用でき、より多くの人がスポーツを楽しむことができる製品づくりは、セノーがやるべき仕事なのだ。

短くすればいいわけではない

シッティングバレーと通常のバレーボールとの大きな違いはサイズ。コートサイズ、ネットサイズ、そして支柱の高さ。もともとバレーボールの支柱を開発していた田中にしてみれば、支柱の高さを短くすることは難しいことではない。しかし、シッティングバレーのコートサイズにあった床金具が設備されている施設はほとんどない。一般のバレーボールコートと兼用で使用するため、ネットの「しなり」、アンテナの位置などはプレーヤーの意見を参考にしながら小さな改良を積み重ねた。注力したのは利用時の安全性だ。

短くすればいいわけではない

カーボン製支柱の本領発揮

シッティングバレーの支柱開発にあたって、営業担当から「軽量で強度も問題のない仕様にしたい」との強い要望があった。国際認定を受けているバレーボールの支柱はスチール製なので重量がある。大人の男性でも持ち運びが大変なほどだ。準備や後片付けの負担を少なくするためには、安全面も考慮する必要があった。

ミズノとの共同開発で2015年に発売したセノーのカーボン製バレー支柱。田中も開発に関わったこの製品は、支柱全体にはカーボンを使用し、最も負荷のかかる部分を効率的に補強する事で、軽量化を実現しながら一定の強度も保つことができる業界からの評価も高い製品だ。この技術をシッティングバレーの支柱にも用いることができれば、要望は全て満たすことができる。開発者としての腕の見せどころだった。

カーボン製支柱の本領発揮

普及活動のための次の開発へ

シッティングバレーは健常者と障がい者が一緒に楽しむことができるスポーツだ。そういった競技特長から、今後の普及には大きく期待できる。しかし、自分たちが思い悩んだように専用のコートがまだまだ整備されていない。そこでセノーは、国際パラバレー連盟とともに、新たに支柱を支える移動式の基礎の開発に乗り出した。これが実用化されれば、コートサイズの合わないバレーボール用の基礎を使用することなく、シッティングバレーを楽しむことができる。

いくつかの試作を経て、移動式の基礎はテスト運用が始まっている。軽量化された支柱を支えるためにはウェイト自体はどうしても重量が必要になってくる。しかし、それでは当初の要件を満たせなくなってしまう。器具としての安全性、プレーヤーの使い勝手、まだまだ課題はたくさんある。田中に不安はない。これはセノーでしかできない仕事だ。この小さな努力の積み重ねがスポーツの発展につながることを自分たちは知っているのだから。

信頼と実績から得られた課題

日本パラバレーボール協会を通じて、国際パラバレー連盟から連絡があったのは2015年の末のことだった。FIVBなどの国際認定を得ているセノーにシッティングバレーの器具の開発についての打診であった。営業部門が日本国内で開発を進めていた器具がいよいよ国際基準を定める舞台に上がったのだ。国際機関との窓口を担当した海外事業推進部の藤原は興奮を抑えられなかった。

信頼と実績から得られた課題

国際基準の壁

セノーが国内で開発を進めていたものと国際パラバレー連盟から要望のあったものでは仕様やサイズにいくつかの異なる点があった。例えば、ネットの長さや、アンテナの取り付け方法など、国際仕様をまとめるための調整を早急に進める必要があった。

藤原は正式にプロジェクトに参加し、連盟からの要望を開発部門に伝え、営業部門とともに改善点を指摘するなど、連盟との折衝以外の部分でも自分ができることを積極的に探した。セノーという会社は立場や役職に関わらず、良いものを作り出すために自由に意見を言える社風がある。海外事業部の藤原は開発の詳しいことがわかるわけではない。しかし、藤原の意見はしっかりと届き、開発部門や営業部門とも臆することなく議論をすることができた。

国際基準の壁

オフィシャルサプライヤー契約

2016年夏、国際パラバレー連盟の会長がセノー本社を訪れた。最終仕様を反映した器具を検品した会長はセノーの技術力を高く評価し、器具の認定とセノーのオフィシャルサプライヤー契約が締結された。単なる連盟との窓口だったわけではなく、開発にも関われたことで藤原の喜びはひとしおだった。しかしこれはゴールではない。ようやくスタートラインに立てたということなのだ。

連盟を通じて多くの国や機関からシッティングバレーに関する問い合わせが増えてきている。国際認定の器具にはサイズなどの明確な規定があるが、日本とは違う環境で器具の使用に工夫を凝らす国も多い。そういった声に触れる部署に身を置くからこそ、周辺器具を含め、このスポーツを広めていくためにはもっと工夫できることがあるのではないかと考えている。

オフィシャルサプライヤー契約

セノーだからできることを考える

2016年末、全日本シッティングバレーの大会会場に藤原はいた。まだまだプレーヤー人口の少ない競技ではあるが誰もがとても楽しそうにプレーしている姿を見て、もっともっとシッティングバレーが広まればいいな、と思うようになった。社内でも同じ気持ちを持っている者は多い。

既存の設備ではどうしてもシッティングバレーの器具を取り付けられない施設のために、あらたに自立式土台(ウエイト)の開発も始まっている。年齢や体力、環境にあわせてもっとスポーツを楽しんでほしい。国際的に競技人口が広がる今、あらためてセノーだからできる仕事は何か、を藤原は今日も考え続けている。

セノーだからできることを考える